必修科目の履修システム

必修科目は 15 のコースから構成されています(Full-semester course : 2、Half-semester course : 12、4-Lecture course : 1)。

 

Full-semester course とは、1 学期間を通して受講するコースです。必修科目の中では、Corporate Finance およびFinancial Accounting がこれに該当します。

 

Half-semester course とは、1 学期の半分の期間(約 8 週間)で完結するコースです。短期間ですが、幅広い分野に関するエッセンスを効率的に学習することができます。必修科目の中では、Managerial Statistics、Manegerial Economics、Strategy Formulation、Leadership Developemt などがこれに該当します。

 

4-Lecture course とは、全 4 回の授業で完結するコースであり、必修科目の中では、Corporate Governance がこれに該当します。

 

このように、必修科目は、様々なビジネスシーンにおいて役立つであろう幅広い基礎知識やスキルを効果的に学ぶことができるようにデザインされています。

 

もっとも、全ての必修科目は Exemption Test に合格すれば受講が免除され、その代わりとして選択科目を受講することができます。この一方、必修科目をあまり受講しないと、クラスターメイトと顔を合わせる機会が少なくなってしまい、ネットワークの重要なチャンスを逃すことにもつながります。

 

このため、必修科目の免除を得て選択科目を受講するか、あるいは、必修科目を受講してクラスターメイトとの関係構築を図るかについて、ほどよいバランスが必要になります。また、自らが得意な必修科目をあえて取ることで、英語での授業に慣れるのも戦略の1つです。

Core Classes (1st Semester in the 1st Year)

1. Full-semester courses

  • Corporate Finance
  • Financial Accounting

2. Half-semester courses

  • Managerial Statistics
  • Managerial Economics
  • Strategy Formulation
  • Leadership Development
  • Marketing Strategy
  • Operations Management

3. 4-Lecture course

  • Corporate Governance 

 

Corporate Finance   

 

DCFモデルを通して企業のバリュエーション手法の習得を目的としたレクチャーベースのコースです。前半は、現在割引価値、CAPMMM理論などの基礎的な分析手法を学習します。後半は、こうした分析手法をケースに適用して、企業のバリュエーション演習を行い、知識の定着を図ります。

 

コー スにおいてカバーする内容が多岐にわたることもあって、ファイナンスの経験がない生徒はやや難解に感じるようです。しかしながら、このコースを受講すれ ば、投資銀行などが行う企業評価の内容は大筋で理解できるようになると思います。また、企業評価を行う際には会計の知識も必要ですので、必修科目である Financial Accounting とセットで履修することで会計・ファイナンスの基礎がしっかりと身につくのではないでしょうか。(by D.H. Class of 2014)

 

Financial Accounting (Accounting I)

 

財務会計の基礎を網羅的に学習することを目的としたコースです。内容としては、US GAAPIFRSの概要、勘定科目の仕訳、資産・負債、キャッシュフロー計算、財務指標、連結財務諸表、リース会計、税効果会計などが含まれます。

 

このほか、WorldComEnronを題材として会計の不正操作を取り上げる講義や、複数の企業のバランスシートを手掛かりに、それぞれがどのような産業に属しているかを分析する講義もありました。基本的に講義はレクチャーベースですが、収益認識などテーマ次第でケースディスカッションなども取り入れられています。(by Y.I. Class of 2014)

 

Managerial Statistics

 

 ビジネスシーンにおいて頻繁に用いられる基礎的な統計学の習得を目的としたレクチャー形式のコースです。内容としては、正規分布、相関関係、推定・検定、二項分布、確率変数、回帰分析などを取り扱います。また、これらの応用編として、ポートフォリオの期待リターンや分散効果等が取り上げられました。このコー スで学習した内容は、MarketingOperationなど他のコースを履修するにあたっても基礎となります。(by K.H. Class of 2014)

 

Managerial Economics

 

ミクロ経済学のゲーム理論、需要・供給、価格決定、限界利益・費用などをテーマとするレクチャーとディスカッションを織り交ぜたコースです。大学学部レベルで学習するミクロ経済学と異なるのは、このコースが経営者の視点で展開される点だと思います。

 

すなわち、企業経営者が価格設定を行う際、限界利益・費用等のミクロ経済学理論を現実問題へどのように応用しているかという点に主眼が置かれています。講義では、ケースのほか、ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルの記事など幅広いリソースを題材に、企業の価格設定についてディスカッションしました。

 

このコースでは、課題の一つとして、学習したミクロ経済理論を用いて企業の価格戦略を分析するグループ・プロジェクトがあり、8頁程度のレポートを執筆しました。このように、理論の習得のみならず、それを能動的に応用する機会が与えられます。(by M.K. Class of 2014)

 

Strategy Formulation

 

企業の競争優位性とそれに基づいたビジネス戦略をテーマとしたディスカッション主体のコースであり、必修科目の中で評判が最も高い授業の1つです。取り扱ったケースとしては、Wal-Mart(コスト戦略)、ZARA(店舗展開戦略)、Samsung(生産戦略)、Apple(マーケティング戦略)などが挙げられます(2012年Fall term の場合)

 

こうした企業を題材として、各企業の競争優位性を活かした経営戦略、競争相手に対処する最適な戦略(competitive dynamics)、事業範囲の適切な取捨選択(corporate scope)等について、経営者の視点から活発な議論が教授を中心に交わされます。

 

企業戦略は様々なファクター(業界特性、環境、タイミング、リソース等)により左右されます。このため、ある企業が過去に取った戦略を、そのまま他のケースに当て嵌めることは、必ずしも適切ではありません。

 

しかし、企業戦略の理解に必要となる視点や分析の切り口を学べたこと、ビジネスの仕組みを突き詰めて考える習慣が身に付いたことは、今後への大きな収穫であったと感じます。

 

因みに、最終成績の40%Class Participationによって評価されるため、日本人はどちらかといえば苦戦しがちなコースであるかもしれません。(by K.K. Class of 2014)

 

 

Marketing Strategy

 

毎回ケースをもとに「そこにmarket opportunityはあるか」、「あるならばどのような戦略で攻めるべきか」の二点に絞って議論。マーケットサイズ及びその成長度合いの決定、Economic value to customers, Life time value of customersなどの概念や、競合、自社の強みなどすべて数値・ファクトベースで議論を進める予想外にquantitativeで、非常に学ぶところが多い。マーケティングというと「コマーシャル」を思い浮かべる人には新しい発見が多く、最も企業の全体戦略に近い科目といえる。

 

Operations Management

 

企業のオペレーション上のボトルネック問題をどのように発見・解決するかに焦点をあてたコースです。リトルの法則(待ち行列理論)や、処理能力、稼働率、待機時間、不確実性のもとでの需要予測などを統計的に分析する方法を学びます。

 

その後、ケースを用いて、ボトルネックとなっているプロセスを定量的に示し、利潤が最大となるようなライン構成を考察したうえで、最適な解決方法を議論しました。取り扱われるケースは、製造業からサービス業まで広範です。最適在庫についての件では、トヨタのジャスト・イン・タイムが取り上げられました。

 

この授業では、企業のオペレーションを比較的簡単な数式で分析・解明することに新鮮味を覚えました。上記のような分析ツールは、新たなビジネスモデルを評価する場合や、企業のビジネスモデルの改善を図る場合、より一般的には、事務フローの改善を試みる場合など、汎用性が高いと思われます。(by M.K. Class of 2014)

 

必修科目の詳細(第2学期)

  • Operations Management
  • Global Economic Environment
  • Decision Model *
  • Managing Marketing Program *
  • Managerial Accounting (Accounting II) *
  • Leadership *

Operations Management

 

(メーカーに限らず金融機関なども含めた)企業のoperationに関わる問題をどう解決するかに焦点をあてたコース。「ゴール」なども題材に使いながら、原料納入・生産・製品需要などに様々なリスクを抱える中で生産能力、ライン構成、最適在庫をどうするかといった問題を、統計・微積分などを駆使し解決。SCMや品質管理など話題も幅広く、いわゆる「生産管理」というイメージとは程遠く、昨今脚光をあびているロジスティックス面に関しても非常に有益な視点を提供。日本がこの分野で貢献する部分も大きく(トヨタなどのcaseも多い)、macro経済学や一部financeのコースのように日本の肩身が狭くない点もよい。

 

Global Economic Environment

 

いわゆるマクロ経済学のコースで、端的に言うと様々なショック要因、政治の動きが経済全体:金融市場、消費活動、企業活動、金融政策、財政政策にどのような影響を与えるかのメカニズムを学び、businessの立場からどう意思決定すべきかを研究。グリーンスパン議長になったつもりで様々なデータをもとに、Fed (米国中央銀行)誘導金利をどう設定するか、あるいは失業率統計の発表を受け債権、株式価格がどう変動するかを予想したり、caseの課題も興味深いものが多い。一見ビジネス上の意思決定とはやや離れている印象のあるマクロ経済事象が、いかに密接にマネージャーとしての意思決定に重要かを思い知らされるコース。

 

Decision Model *

 

基本的なコンセプトは確率・統計理論を用いて、management, finance上の意思決定を数値化し、モデルを組んで最適化したり、様々な可能性をシミュレーションして意思決定できる形まで加工するというもの。与えられた為替、stock, bond等のリターンとボラティリティからどのオプションや先物のポートフォリオがリスクを最小化できるか、過去の売上・価格・需要変動から、どのタイミングでどの価格をつければ在庫リスクを最小化しつつ期待利益を最大化できるかなど。Financeの世界も含め現実の世界は各要素を数値化するのが困難なケースが多いが、それを割り引いても非常に有益。

 

Managing Marketing Program *

 

Marketing Strategyで学習した競合・自社・顧客の3C分析を行ったあと、じゃあ実際どのようなマーケティングプログラムを作成して訴求していくかに関するツールを修得するためのコース。トピックとしてはConjoint分析、経済的、心理的側面も考慮した商品の最適pricing、CRM、メディア・チャネル・プロモーションに関する意思決定など。統計学で学んだ回帰分析をよく用い定量的な部分も多く、また最新のon-line marketingに関しても扱う。製薬会社のマーケティングプログラムを実際に作成して、4週間ほどかけてシミュレーションを行う大型プロジェクトがあり、実際のマーケティング活動に関する市場の反応を見つつ、学習した成果を応用することが出来る。

 

Managerial Accounting (Accounting II) *

 

教授自身が「インセンティブに関するコース」と定義する、企業内でのオペレーションの最適化・評価に関する意思決定を行う際の基礎となる管理会計に関して学ぶ。現在の複雑化した企業内では権限の委譲は必須であるが、各マネージャーが追求する部分最適の合計が必ずしも企業の全体最適に結びつかない事を認識した上で、両者を同一化させるためには入念なインセンティブシステム作りが必要。具体的には個々のsub-organizationを管理する際にその評価基準そのもの(ROEで評価するのか、あるいはnet profitを用いるのか、はたまたresidual incomeやEVAを見るのか)によって各マネージャーの行動(インセンティブ)がどう変化するかなどを生徒のロールプレイシミュレーションなどを通して学習。またABC会計、移転価格(transfer pricing)などをどのように設定すれば、企業全体の活動が最適化されるかも研究する。

 

Leadership *

 

人の性格・特質を的確に判断するためのツール、他人の自分に対する印象のコントロール法、意思決定の際に陥り易いワナ、negotiationで活用すべきテクニック、careerの組み立て方などリーダーに必要な様々な側面的能力に関してcase中心に学習。またリーダーとして成功するために最も必要な能力は自己分析の的確さにあるという信念のもと、他者の自分自身に対する評価(いわゆる360度評価)を参考にしつつ自己分析を進めていき、最後に論文を書き上げる。以前の会社上司・同僚、及びグループワークのチームメートのシビアな評価をもとにし、自分の知られざる一面を認識したり、ビジネススクールと仕事の場で自分の行動、自分に対する印象がどう変化したかなど知ることができ、非常に楽しいコースでもある。